浮世みならひ

まっさら新米の心。恩師は冷ごはん。

ばなな

こんなにもおいしいのに

おいしいのに…!

アレを入れ忘れた

ばなな

そう、ばなな

ホットケーキにバナナを入れると、熱が入ったバナナがとろっとして、洋酒を入れたような熟れた甘みが生地まで行き渡って、、

それはもう

それはもううまい

 

アレを入れ忘れることってけっこうある

このままでも十分おいしい

贅沢言わない

でもやっぱり

アレがあったのだから

アレを入れたら

もう限界突破でおいしかったのに

なんて思いながら

おいしいなぁって食いものをほおばる平穏

 

影がなごる

おやつはいつも黄昏時だった

伸びた影があとを引いて薄暗い中でビスケットをかじる

バターの味は焦げてしまいそうなほどの橙色

あんな鮮烈な色はあっけなく姿を消して

安堵するような物足りないような

まだ気だるさに甘ったれたい気持ちを残したまま見たくない世界に目を向けようか

暮れる

黄昏時

別に晴れていなくても夕日を感じる

心が明かりを呼んでいるのか

朝日とも似た炉の中が燃えるような強い光

朝日は強く意識を未来へとつなぐ

夕日は少し過去や歪んだ世界に引きずり込むような深さがある

カーテンの隙間から漏れ出す光が感情を連れて行こうとする

待って

私はまだ行かない

 

印象的な記憶にはいつも夕日がさしていた

今もあなたとこうしてちゃんと見ている

遠くから見ているだけでいい

でも

あなたも一緒なのなら

向こう側を見てみてもいいかな

そんな気がした