浮世みならひ

まっさら新米の心。恩師は冷ごはん。

探る 透明の男

今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」

 

 

生まれてこの方おじいちゃんに会ったことがない。

 

 

そして これから先も決して会うことはできない。

 

 

なぜなら itaki が誕生するよりずっと昔に若くして浮世を去ってしまったから

 

 

今回のお題を機会に 家族にかしこまって

よく知らなかったおじいちゃんのことを取材してみました。

 

 

 

   も く じ

 

 

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  透明の母

 

彼の記憶に本当の母親の姿はなかった。

それには時代に伴った何らかの理由があったようだが

物心付く頃には血の繋がりのない母や兄弟と暮らしていたという。

 

といっても 不幸だったというわけではなく

周囲からはとても可愛いがられ 大切に育てられていたらしい。

 

自身と弟妹とのギャップには 心細さを感じていたかもしれない。

けれど みにくいアヒルの子のように やがて大人になれば

浮世にアイデンティティを発揮できる居場所を見つけて生き抜く

底力を隠しもっていそうな 孤高な印象の男だ

 

そもそも彼はその関係性を幾つの頃から理解していたのだろう。

やはり 実の母に会いたいと思うことはあったのか

或いは 捨てられたことに対して 恨みつらみを抱えていたのか

 

真意は永久に謎のまま。

 

しかし 片親家庭でも愛されて育った itaki が推測するに

共に過ごした記憶すらない実の母は 彼にとっては ほぼ他人に近い存在で

興味や恋しさがあったとしても

どうしても会いたいという強い意志までは無かったのでは… と思う。

 

会えずに後悔するかどうかは その人の生き方次第なのではないか

 

 

おじいちゃんが生きていたなら

家族に存分に甘えられる 幸せボケした itaki を ズバッと一喝してほしい。

 

 

 

  未来を歩く英語教師

 

彼は英語をこよなく愛していた。

 

公立学校にて英語を教えていたが、もともと教師を目指してはいなかった。

 

先生としての威厳を保とうと

立場を振りかざして偉そうに振舞うようなことは決してなく

常に自然体で 生徒に対等に接していたので、バカにされることもあったという。

 

ビジネス的に 受験対策を目指した授業をしたほうが

その場限りでは分かりやすくて 学生には役に立つのかもしれない。

 

しかし 彼の授業の根本には新鮮かつ上質な英語を教えるという信念があった

 

そのために仕事と並行して ネイティブな英語を教えている人の元に毎週通い

自らも学び続けていたというから驚く。

 

今でいえば 英会話教室の講師などのほうが向いていたのかもしれない。

 

生の語学と文化に触れるため 自費で渡米をしたことも。

当時 それは非常に珍しく 先進的な行動だったという。

きっと広い世界を知って、より英語への熱意が深まっていったに違いない。

 

 

itaki には 壮大すぎるよ おじいちゃん。 itaki 心の俳句

 

英語が苦手で 世間知らずな私に

世界の広さや英会話の魅力を教えてはくれませんか?

 

itaki も 海外 行ってみたい!

 

 

 

  審美眼

 

クラシック好き・美食家・読書家・写真家…

 

家族を頻繁に美術館や旅行に連れて行ってくれるお父さん

 

単独でも車を走らせたり

珈琲が好きで純喫茶の本格派を飲みに行ったり。

 

 

itaki にも少しはその遺伝子 受け継がれているかしら?

おじいちゃんとギャラリー巡りしてみたかったなぁ。

 

 

 

  笑う

 

家族や生徒の前ではどちらかというと寡黙な男。

 

しかし 昔ながらの友人とは頻繁に親睦を深め、よく笑っていたという。

 

 

もう少し長生きして年を取ったら

家族の前で 穏やかな笑顔を見せてくれるなんてこともあったのかな。

 

 

 

  不自然な死

 

先天性の病

 

学生の頃から心臓疾患により 諦めなければならないことも多く

結婚してからは 通院をして大量の薬を服用していた。

 

しかしその薬のおかげで なんとか通常に生きることができていた

 

 

完治の可能性

 

そんなある日 人伝に

その病気を手術できるスーパードクターが居る』という話が舞い込んできた。

 

同じ病気を患っていた知り合いも 実際に手術を受け

術後 見違えるように元気を取り戻し

薬など飲まなくとも暮らせるようになったのだという。

 

医師から「特別リスクを伴う手術である」という説明があったわけでもなかったので

彼の妻(おばあちゃん)は

「もしそれで今よりもっと元気になって長生きできるのなら…」と 手術を薦めた。

 

彼は初め あまり乗り気ではなかったが

妻が自分の健康を願ってくれていることもあってか 手術を受けることを決意。

 

 

手術当日

 

前日になって急に “手術に100%はないから” と医師は言った。

今までそんなことは一切 口にしていなかったのに。

 

 

手術室の前で成功を祈り見守る家族。

 

 

ところが終了予定時刻になっても 手術が終わる様子がない。

 

 

しばらく不安に思って待っていると

突然「出血量が多く、血液が不足している」と言われる。

 

彼の弟妹が 深夜でもめげずに必死で職場の同僚に連絡して

献血をお願いし 血を集めて 輸血をした。

 

 

ところがその後 手術室から出てきた彼は

 

もう 死んでいるような顔をしていたという

 

 

集中治療室

 

手術はどうなったのか。

 

彼は集中治療室へ移された。

 

 

様子を見に行くと そこにいた彼は もう植物状態だった。

 

 

抑揚のない医師の声から

 

現在は電気ショックを与えて心臓を動かしているため

機械を止めたら死にます。どのくらい続けますか?

 

というニュアンスだけが変に浮いて聞き取れた。

 

 

どう見ても もう戻ってくるような姿ではなかった。

 

電気は切られた。

 

「ご臨終です。」

 

 

病院側の死因の理由としては

 

「もともと通院していた病院側の検査データに見落としがあり

手術に耐えられる体ではなかった 」と。

 

 

そうして ある年の冬、娘(itaki の母)は まだ中学生のうちに 父を亡くした

 

 

「もし手術をせずに まるで食事のように薬を飲む生活を続けていたら

もう少し長く生きることができたのだろうか?」と 妻は自分を責めた。

 

 

人ってそんなに簡単に死んでしまうのか

身近な死に触れたことの無い itaki には まるで信じられない話だった。

 

 

 

そして現在

ねこちゃん(母)は 同じような体質で通院し やはりご飯のように薬を飲んでいる。

 

 

不自然な死がもう繰り返されることのないように

ねこちゃんが遠くへ行ってしまわないように

itaki が ねこちゃんを守らなきゃ…!

 

 

 

  溢れる追悼

 

彼の葬式には真冬であるにも関わらず

お寺に入りきらない程の教え子たちが押し寄せた

 

おとなしくて 人気のある教師でこそなかったものの

英語に対する実直さ、本当は人間味に満ちていて根は優しいこと…

それも 伝わる生徒にはきちんと伝わっていた。

 

 

itaki も 先生の授業 受けてみたかったな…

 

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今回 家族に取材をしてみて

まるでリアルタイムに家族の一員であったかのような 生々しい感覚を覚えました

 

いままでのおじいちゃんは 居るようで居なくて

ぼんやりと実在しない透明人間のように映っていたのですが

今では 懐かしくも鮮明に 心の中で生きている気がしています

 

これからは お仏壇のお参りをするにも

正面に座って聞いてくれているおじいちゃんを意識して

もっと素直に語りかけることができそうです。

 

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さて 納期遅れにはなってしまうけれど

itaki のまだ生きている おばあちゃんの取材にも挑戦したので

後日 アップしたいと思っています。

 

かなり強烈な人ですよ…(震え声)